前立腺とは
前立腺肥大症
診断
まずはIPSS(国際前立腺症状スコア)というアンケートで自覚症状を確認します。どれぐらいの割合で次のような症状がありましたか | 全くない | 5回に1回の割合より少ない | 2回に1回の割合より少ない | 2回に1回の割合くらい | 2回に1回の割合より多い | ほとんどいつも |
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この1か月の間に、尿をしたあとにまだ尿が残っている感じがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿をしている間に尿が何度もとぎれることがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿を我慢するのが難しいことがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿の勢いが弱いことがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿をし始めるためにお腹に力を入れることがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
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この1か月の間に、夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするために起きましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
とても満足 | 満足 | ほぼ満足 | なんとも いえない | やや不満 | 不満 | つらい | |
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現在の尿の状態がこのまま変わらず続くとしたら、どう思いますか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
QOLスコア 点 軽症;0,1点、中等症;2,3,4点、重症;5,6点
続いて実際の尿の勢いと、排尿後の残尿を測定します。それから、腹部超音波検査で前立腺の体積を確認します。前立腺の正常体積は20mlといわれています。
重症度 | 1.症状 | 2.QOL | 3.機能 | 4.体積 | |
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IPSS | 最大尿流率 | 残尿 | 体積 | ||
軽症 | 7点以下 | 0,1 | 15ml/sec以上かつ50ml未満 | 20ml以下 | |
中等症 | 8-19点 | 2,3,4 | 5-15ml/secかつ100ml未満 | 20-50ml | |
重症 | 20点以上 | 5,6 | 5ml/sec未満または100ml以上 | 50ml以上 |
治療
内服加療
αブロッカー(ハルナール、ユリーフ、フリバスなど)
前立腺の緊張をとる薬です。昔から使われている薬で、速効性があります。ときどき「尿を出しやすくするお薬です」とご説明すると、「頻尿で困っているのにそれは困る」と言われる患者さんがいらっしゃいますが、概要のところでもご説明したように、尿をスムーズに出るようにすることで、膀胱が一生懸命排尿する必要がなくなり、結果的に頻尿の症状も改善することが多いです。
PDE5阻害薬(ザルティア)
前立腺の血管を拡張させ、循環を良くすることによって緊張を和らげる薬です。最近ではαブロッカーと同等の効果があるといわれています。
5αリダクターゼ阻害薬
前立腺は男性ホルモンによって大きくなる臓器です。この男性ホルモンが前立腺組織の中で作用するのを阻害する薬です。これにより、前立腺の体積が小さくなります。この薬は効果が出るのにやや時間がかかりますので、通常上記2剤との併用で用いられることが多いです。また、男性ホルモンを抑えることでPSAが見かけ上、下がってしまいます(約半分)。したがって、前立腺がんの疑いがある場合にはしっかりとがんがないことを確認してから使用することになります。
手術療法
TURP
従来から行われている内視鏡で前立腺組織を削り、トンネルを広げてあげる治療です。よく間違われることがあるのですが、前立腺には内腺と外腺という2つの部分があり、前立腺肥大症は内腺の肥大です。したがって、内視鏡で切除するのもこの内腺の部分だけで、たとえて言うならば、ミカンの実の部分は削り取り、皮の部分は残ります。困ったことに、前立腺がんは外腺すなわち残った皮の部分にできますので、治療後も前立腺がんの発生には他の方と同様に注意が必要です。手術自体は1-2週間程度の入院が必要です。
HoLEP
内視鏡で前立腺組織を削っていくのではなく、ホルミウムレーザーを用いて前立腺組織全体をくりぬく方法です。先ほどの例で言うとミカン実を削り取るのではなく、皮をむいて取り出すイメージです。したがってミカンの果汁(出血)が前述のTURPよりも少ないというメリットがあり、心筋梗塞や脳梗塞の予防でも抗凝固薬を中止せずに手術ができるというメリットがあります。
CVP
2016年から保険適応となった、レーザーを用いて前立腺組織を蒸散させる方法です。上記2つの方法に比べて手術の難易度が高くなく、さらに出血も少ない方法です。体への負担も少なく、高齢者や、抗凝固薬を中止しなくても手術が行えるという利点があります。
文献:Berry SJ et al: J Urol 132(3): 474-479, 1984前立腺炎
前立腺炎の分類
- カテゴリーI(急性細菌性前立腺炎)
- カテゴリーII(慢性細菌性前立腺炎)
- カテゴリーIII(慢性非細菌性前立腺炎)尿中に炎症細胞があればIIIA、なければIIIBに分類
- カテゴリーIV(無症候性炎症性前立腺炎)
原因
症状
急性細菌性前立腺炎の場合は、高熱や、灼熱感を伴う強い排尿時痛等の症状が出ることが多いのに対し、慢性前立腺炎では、下腹部や陰茎、陰嚢など、さまざまな部位に鈍痛や不快感、さらには頻尿、残尿感など多彩な症状がでることがあり、しばしば原因がはっきりわからない、不定愁訴として扱われる場合があります。検査・診断
一般的な尿検査に加えて、尿中の白血球の有無(炎症がある場合にみられる)、細菌の有無を確認します。 同じ前立腺に発生する病気に前立腺がんがあり、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(Prostatic specific antigen)を測定します。ただし、慢性前立腺炎においても上昇がみられるため、慎重な判断が必要です。慢性前立腺炎から前立腺がんになることはありません。治療
薬物療法に先駆けて、生活習慣の改善が大切です。原因が完全には解明されてはおらず、治療には時間がかかることが多く、根気よく治療を続けていくことが大切です。生活習慣の改善
原因の項にあった、またがる姿勢、長時間の座位、などを避けること。また規則正しい生活を心がけ、ストレスをためないこと、飲酒や刺激物(コーヒーや極端に辛い物など)を避ける、といった生活習慣の改善が大切です。薬物療法
抗生物質
すべての病原菌が尿検査でわかるわけではありません。尿検査でわからないような通常の細菌以外の病原菌を想定して抗生物質の投与が行われることがあります。
αブロッカー(ハルナール、ユリーフ、フリバスなど)
排尿障害が炎症の原因になっている場合があり、前立腺肥大症の薬を用いる場合があります。前立腺平滑筋を弛緩させ、尿流を改善させます 。
PDE5阻害薬(ザルティア)
前立腺の血流障害が原因の一つと考えられており、末梢循環を改善させるPDE5阻害薬が用いられることがあります。
植物製剤
セルニルトンという花粉の抽出液エキスがあり、ヨーロッパで古くから用いられています。同様の植物製剤でエビプロスタットという薬もあります。
漢方薬
竜胆瀉肝湯 、八味地黄丸 などの漢方薬が有効な場合があります。